ラテン・アメリカ政経学会

オンライン・ラウンドテーブル(ORT)とは

オンライン・ラウンドテーブルとは、オンライン会議システムを利用して、会員間で部会などの意見交換を行う手段です。
会員間の意見交換の場所として、学会には大会と地域部会があります。これにオンラインの場を加えることで、開催や参加にかかる時間的・金銭的な費用を下げることができます。学会として活発な意見交換の機会の提供を目指します。

<内容>
具体的には以下のような機会の提供を想定しています。
・従来の地域部会で行っていた研究報告
・会員が出版した本のブックトーク
・最近執筆した論文、レポート、エッセイなどについての報告
・ラ米各国のコロナウイルス対策等の最新情報の共有
・新規会員の自己紹介や交流

<開催要領>
1 ORT開催を提案する会員は、開催希望日の2週間までに、企画案(テーマ、司会、報告者、討論者など)をORT担当者へ連絡してください。報告者自身が提案することも可能です。
2 ORT担当者が企画を確認し、承認します。
3 提案者が開催日時を決定したのち、ORT担当者がオンライン会議を設定します。
4 提案者がメーリングリストを通じて開催概要を会員へ告知します。
5 終了後、提案者は開催報告をORT担当者へ提出して下さい。記録として学会ウェブサイトに掲載します。
企画の提案のほか、意見交換が活発になるようなテーマをお持ちの方は、ORT担当者までお知らせください。

<オンライン会議システムの利用について>
ORTはオンライン会議システムの1つであるzoomを使って開催する予定です。インターネットに接続したパソコン、タブレット、スマートフォンから利用できます。参加に費用はかかりません。
オンライン会議への参加に慣れていない会員には、利用方法などの情報を提供したり、オンライン会議室へのアクセスをサポートします。

ORT担当者
舛方周一郎(オンライン・イベント担当)
s-masukata<at>tufs.ac.jp

ORT開催報告

第3回ORT(2022年1月22日土曜日10:00~11:00) 
報告テーマ ブケレ政権下のエルサルバドル
報告者 吉田和隆(在エルサルバドル日本国大使館二等書記官)
討論者 笛田千容会員(駒澤大学)
司会 清水達也会員(アジア経済研究所)

1992年の和平合意以降、ポスト冷戦期の復興と民主主義国家建設の事例として注目されてきたエルサルバドルであるが、約30年間にわたる内戦の当事者であった右派の国民共和同盟(ARENA)と左派のファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)による二大政党制の枠組みを打破する形で、2019年大統領選挙に勝利した若きブケレ大統領の下、世界初のビットコインの法定通貨化等で世界からの関心を集めている。
発表者は在エルサルバドル日本国大使館での勤務の中で同国の政治情勢をフォローし、ブケレ大統領が勝利した2019年大統領選挙も現地で観察した。今回のORTには19名が参加したが、質疑応答のセッションで非常に活発な議論が交わされたことは、コロナ禍の下、現地調査が困難な状況が続く中において、現地からの報告に意義があったことの証左と言えよう。
発表では、汚職問題、治安問題、停滞する経済成長等の問題からARENA及びFMLNの二大政党が国民からの支持を失っていく中、ブケレ大統領が如何に台頭するに至ったか、また、大統領就任後、2021年2月に行われた国会議員選挙を通じて、如何にブケレ大統領が国内の政治基盤を盤石なものにしていったのかについて、ポピュリズムの学術的議論に深く触れることは避けつつも、ポピュリストとも評されるブケレ大統領の政治手法に触れつつ説明を行った。エルサルバドル近代史におけるブケレ大統領の誕生は、1992年の和平合意後、内戦の傷跡から民主主義国家として復興の道を歩むエルサルバドルというパラダイムの変化を意味するという結論には、参加頂いた方々にも納得してもらえたのではないだろうか。
国内的には盤石な状況にあり、2024年大統領選挙での連続再選の可能性も指摘されるブケレ大統領であるが、他方、その政治手法が権威主義的であるとして、米国を中心とした国際社会からエルサルバドルにおける民主主義の退化に対する懸念が強まっている状況や、公的債務の問題等、ブケレ大統領にとってリスクになり得る諸点も説明した。ブケレ大統領の今後の動向については、これからも注視して行きたい。

文責:吉田和隆


第2回ORT(2021年2月20日土曜日09:30~11:00) 
報告テーマ フロリダ州大統領選挙現地報告
報告者 片岡一生(在マイアミ日本国総領事館専門調査員) 
司会  宇野健也会員(外務省)

今回のORTは、コロナ禍の下、会員の現地調査が困難になっている一方、オンライン会議が一般化しつつある状況に鑑み、日本国内と現地在住者間の交流を促進する試みの1つとして、外務省の在外公館職員も招くかたちで実施された。初めての試みであるが、非会員を含めて31名の参加があり、活発な質疑応答が行われるなど、現地とつなぐオンライン会議のポテンシャルを感じさせるイベントとなった。今後も、現地在住の研究者をはじめ日本関連の官公庁・企業・団体関係者等との交流も広がっていくことを期待したい。
片岡氏からは、米国政治におけるフロリダ州の重要性について俯瞰した上で、2020年大統領選挙におけるヒスパニック票の位置付けや、その政治参加や投票行動の態様・推移もしくは背景等について、現地専門家の見方も交えつつ、詳細な資料を用いて包括的に報告いただいた。また、トランプ候補支持の要因分析や、これがバイデン政権の対中南米政策に与える影響につき議論いただいた。
本イベントを通じて、まず、日本国内のみならず米国内においても、「ヒスパニック」と一括りにされる傾向があると思われるが、キューバ系、プエルトリコ系、メキシコ系はそれぞれ異なる行動を示しており、出身国をはじめとするヒスパニックの多様性に着目する必要性が明らかになったと考えられる。例えば、国境の壁や反移民政策がフロリダ州のヒスパニック票に大きな影響を与えない構図は、現地ならではの視点と思われた。他方、同時に、低所得者層による共和党支持など、マイノリティとしてのヒスパニック票の動向も報告され、この点については更なる整理が必要と思われた。また、バイデン政権の対中南米政策については、時間的な制約もあり、また米国の対中南米政策の方針や陣容が現状固まっていないこと等から限定的な議論に留まったが、出席会員からは、オバマ政権の対キューバ政策に関する評価や制裁支持・不支持をめぐる動向、それが米国のキューバのみならず対中南米政策に及ぼす影響のほか、出身国別グループ間の相関関係、近年の中国との競争的関係を考慮に入れる必要性、米国議会の状況など、今後の検討に資する貴重な視座が示されることとなった。

文責:宇野健也


第1回ORT(2020年8月21日金曜日14:00~15:00) 
ブックトーク 大澤傑会員(駿河台大学)『独裁が揺らぐとき:個人支配体制の比較政治』
司会 舛方周一郎会員(東京外国語大学)

大澤会員は、独裁体制の類型の一つである個人支配体制の成否やその型式に関する法則性と、個人支配体制が危機に直面した時にどのように崩壊、あるいは維持されるパターンに関する理論的な知見を説明したのちに、パラグアイとニカラグアの事例を中心に、独裁体制の統治と体制変動の関係性や、ラテンアメリカ地域全体へのインプリケーションなどを示した。
討論者の豊田紳会員(アジア経済研究所)は、本書の①事例選択の妥当性、②国家と社会をつなげる政党の位置づけ、③差異法を用いた本書の方法論などに対する疑問を提示した。
質疑応答では、①体制の正統性に対する理論的な位置づけ、②ベネズエラのチャベス政権を個人支配型と定義する根拠、③経済発展の度合と体制の維持・崩壊に関する関係性、④個人独裁者が自由に供与できる政治的な裁量はどのように規定されるのか、⑤ベネズエラのマドゥロ政権の存続・崩壊の可能性などに関して議論が行われた。
本イベントを通じて、個人支配型の政治体制に関する比較政治学を専門とする大澤会員と、1国の地域研究者の分析とは異なる含意をラテンアメリカ研究者たちとが共有できたことは、本学会としても意義深いことであった。
なお、オンライン・ラウンドテーブルは初めての試みでありながら、14名の会員の参加があり、報告者との活発な意見交換がなされたことにも触れておきたい。今後も、ORTを通じて若手研究者の報告や、コロナ禍のラテンアメリカ地域の情報を共有する機会を提供する場になることが期待される。

文責:舛方周一郎